第18号 春木 実(顧問弁護士 赤塚)
故郷への思い

 生まれは赤塚。魚やさつま芋はあったが金がない。学校に金を持って行かねばならない日は休みたい気分だった。親に仕送りしなければと、中学を卒業してすぐ県外就職した。−そんな時代だった。 人は離れて振り返ってみた時、それまで気づいていなかったことが見えてくると言う。私にとって、離れた故郷は、振り返ってみても何もないところのはずだった。
 ところが、現実に、故郷を離れて振り返った時、ひとつ浮かんだ思い出が、また、次の思い出を蘇らせて行く。美しい海、浜、浜辺に並べられていた何十艘という漁船群、 そして、それが夕日を浴びて出航していく様、とんぼとり、桑の実、グミ採り等々。すべてはお金では賄えない自然満喫の日々が、心の財産となっていたことに気づかされた。 あれから半世紀近い時が流れ、思い出の原風景もセピア色になりつつあるが、決して朽ち果てることはない。
 関西在住の皆様におかれても、きっと同じような思いを抱いておられる方も少なくないと思う。近畿・大社会が、望郷の思いを癒す停泊港になれたならばと、微力ながらも尽力していくつもりである。

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