第28号 近畿・大社会顧問弁護士 春木 実 (赤塚)
相続でもめないために

1.遺産相続は大別すると次の2つになります。
 @法定相続・・・相続人も相続分も民法の定めに従う。
 A指定相続・・・遺言によって相続人(受遺者含む)、相続分を決めておく。
2.法定相続
 @法定相続人・・・第1順位 子、第2順位 直系尊属、第3順位 兄弟姉妹、被相続人の配偶者は上記のいずれの場合も共同相続人となる。
 A法定相続分・・・民法900条に明記。
3.指定相続
 亡くなった人(被相続人)が遺言を残していなければ遺産分割は民法に定める法定相続に従うことになるが、それをよしとせず被相続人の意志で相続人(受遺者を含む)、 相続分も定めたいと思うのであれば、生前においてそれを遺言に明記しておくとそれが優先する。これが指定相続といわていれます。 但し、遺言書で遺産全部をすべて自由に処分指定することができるかについては、遺留分権者の権利を侵害しない限度でという制約があります。
4.遺留分
 法定相続人には、法律上推定遺産分配を受ける者として認められていることに鑑み、法定相続人のうち一定の割合(直系尊属のみの相続の場合は3分の1。 その他の場合は2分の1)の承継を保障されるべき権利として守ってやらねばならないとされているのが遺留分という制度です。
(遺留分権者)配偶者、子、直径尊属。(兄弟姉妹は遺留分権なし)
 遺留分を侵害した遺言は、侵害部分については、遺留分減殺請求権の行使により無効となります。
5.遺言書の種類、作成
 自筆証書、公正証書、秘密証書、特別の方式による遺言の各方法があります。通常は自筆証書と公正証書の2つが主だったものとされているのでこの2つについて説明します。
 @自筆証書遺言書
  遺言者がその全文、日付及び氏名を自書しこれに印を押す。パソコン、ワープロは不可。
 A公正証書遺言
  法務省管轄の公正役場で公証人に作成してもらう。遺言者の外、証人2人の立ち会いが必要。
 自筆証書遺言は、公正証書に比べて簡易ですが、相続開始を知ってから遅滞なく家庭裁判所において共同相続人立ち会いのうえで検認の手続きを受けることが要求されています。 公正証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きは不要です。
(参考)
民法900条
(法定相続分)
 @相続人が配偶者と子供の場合
  配偶者二分の一、子二分の一。
 A相続人が配偶者と直系尊属の場合
  配偶者三分の二、直系尊属三分の一。
 B相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
  配偶者四分の三、兄妹姉妹四分の一。
民法887条2項、第889条2項
 (代襲相続)
  被相続人の子が相続開始以前に死亡したり、被相続人欠落者となっていたり、もしくは排除されている場合は、その子が代襲して相続人となる。相続人兄弟姉妹にも代襲相続の適用がある。
6.課税相続財産
  課税相続財産は、正味相続財産(相続財産総額-債務・公課・葬式費用)から基礎控除額を差し引いたものです。
  基礎控除は定額控除と法定相続人比例控除を合算したもので、その金額は次の通りです。
    (相続開始)   (定額部分)  (法定相続人比例控除)
  @平成27年1月1日以後  3000万円   1人当たり600万円
  A平成26年12月31日以前 5000万円   1人当たり1000万円
  (平成27年1月1日以後の例)
 妻と子供が2人いる場合 3000万円+600万円×3=4800万円
 この4800万円を超えた金額部分が課税対象になります。
 遺産土地の評価は時価ではなく路線価であること、申告期限は10ヶ月です。

リターン