第23号 梶谷 尚義 (宮西市)
ここ(大社)が一番えぇがねぇ

 「間もなく終点、『出雲大社』です!」一畑バスの運転手さんのアナウンスである。
 JR出雲市駅から、オレンジ色を基調とした一畑バスに乗り、半年ぶりに終点のバス停、『出雲大社』で降りた。実家へはバス停から歩いてわずか2分。私は、近年、機会を見つけては生まれ育った大社町に帰省するようになった。
 バスが荒茅から大社町内に入り、浜山、荒木、宇迦橋、大鳥居、勢溜と通り過ぎる。そして、弥山が目の前に大きく迫ってくる。懐かしと同時に心が和む景色である。
 大社町に帰省すると、早速、割子そばを食べる。割子そばが大好きで、朝昼晩、割子そばを食べても食べ飽きることがないくらいである。長く吹田市に住んでいるが、割子そばを食べさせてくれる店があると聞くと、ついつい探しにいってしまうほどで、 大阪では玉造、日本橋、梅田第三ビル、東梅田、江坂にある店までは開拓できた。京都では河原町、平安神宮近くにある。
 大社町を離れて40年近くになるが、周りの同僚からは、「故郷(ふるさと)があってええなぁ。大阪で生まれ育った者から見ると羨ましい。」とよく言われる。 若い頃はこの言葉に全く実感がわかなかったが、定年までカウントダウンとさんた昨今、この言葉の意味が少しずつわかるようになってきた。
一畑電車の写真  そんな折、平田出身の錦織良成さんが、出雲を舞台とした映画が「RAILWAYS〜49歳で電車の運転手になった男の物語〜」を監督・制作し、大ヒットしていると聞き、鑑賞した。 出雲市出身の主人公(中井貴一)が、東京の有名企業で幹部社員としてバリバリ働いていたが、ある日突然、会社を退職し、小さい頃の夢だった通称 ”バタデン” 、一畑電車の運転手になった物語である。 映画の中で、出雲地方の風景、電鉄大社駅、正月の出雲大社や吉兆、番内の映像なども流れる。そして、この出雲を指して、主人公の母親(奈良岡朋子)が、「ここ(出雲)が一番えぇがねぇ」という言葉がとても印象的で感動的である。
 そう、やぱり大社が一番えぇとこがだねぇ!

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