第35号 小林 等
代役で大人気 ”番内のすごさ知る”

 昨年の近畿大社会総会・懇親会の当日、ある方から突然「小林君、今日番内頼むで!」と言われ、思わず「えっ!」と絶句すると、間髪入れずに「君しかおらんから」と。事前の会議で番内のなり手3人は一般の参加者から募集し、足りない場合は幹事が補うことになっていましたが、別の方に決まっていたはずでした。ところが当日その方が出来ないとのことで想定外のお鉢が回ってきたというわけです。
番内の衣装
 大社町の出身ではないので「吉兆さん」「番内さん」は聞いたことはありましたが実際に見たことはなく、出雲大社の神事やお祭り、お正月に登場するのだろういうくらいの知識しかありませんでした。吉兆さんとは「歳徳神」と大きく縫い取りした高さ10m,幅1mの幟(吉兆幟)のことであり、番内はその神事の先祓いをする先導役ということを知ったのもつい最近のことです。 身近な「番内さん」としては、厄男が扮して家々を回り、青竹で玄関先の地面を叩いては「悪魔払い」と叫んで厄払いをする行事があるそうです。ただ、近年は少子高齢化が進み、どこの地区も担い手不足に直面していると聞きました。
 近畿大社会総会・懇親会が始まると一般参加の方2人とともに控え室に集まり、番内の衣装を着付けていただきました。会が進み、いよいよ出番です。手伝ってもらいながら木彫りの面を付け、テーブルが並ぶ会場に入りました。指示に従い、竹で床を叩き「悪魔払い〜」と声を出しながら三方に分かれて進みます。面をかぶると前が見づらく、ぶつからないように歩くのに必死でした。最初は周りの人に距離を置かれている感じがありましたが、時間が経つにつれ人が集まってきて、一緒に写真を撮られるようになりました。行く先々で参加者に取り囲まれカメラやスマホを向けられる。「えらいことだ」と戸惑いつつも、楽しい、ちょっとしたアイドル気分を味わいました。
 今回は予期せぬ貴重な体験ができました。どうなることかと思いましたが、やってみるものですね。番内人気を肌で感じ、出雲大社の歴史と伝統に触れた思いがしました。

リターン