第35号 泊 吉実
大社町をのんびり周遊 ”電気自動車運行”

 稲佐の浜までおんぼらと―乗客6人を乗せて出雲大社周辺を周遊する電気自動車の運行が5月から始まった。時速20キロ未満のスロー運転が特徴だ。交通広場発着で毎週金曜日から月曜の4日間、1日10便を走らせる。「大社名物として定着してほしい」と出雲市観光課では期待を寄せている。
 

 車は8人乗りの電気自動車で、愛称は「縁結ビークル(えんむすびびーくる)」。出雲大社にちなんむ「縁結び」と乗り物を意味する英語の「ビークル(Vehicle)」を合わせた。運行に先立って出雲市が愛称を募集したところ、約200点の応募があり、イメージに合うとしてこの愛称を採用した。車は窓を大きく取り、車体にはウサギやノドグロ、そばなど大社にまつわるラッピングが施されている。価格は約900万円。
 運行主体は、大社地域自治協会連合会、出雲観光協会、商工団体、交通安全協会、交通事業者、出雲市で構成する「出雲市グリーンスローモビリティ運行協議会」。出雲観光タクシーが運行する。
 運行ルートは交通広場をスタートし正門前、宮内交差点、阿国の墓、奉納山入口、稲佐の浜(稲佐の浜駐車場)の停留所を経由し、神迎の道を通って交通広場に戻る約3キロ。30分かけて巡る。毎週金曜日から月曜日、午前9時から40分間隔で10便を運行する。乗客の定員は6人。神迎の道に停留所はなく、運転手に知らせ空席があれば、どこからでも乗れる。1乗車の運賃は500円、「ワンデ―パス」1000円、「ツーデーパス」1500円。  乗車時に現金かキャッシュレス決済(Paypay)で支払う。事業費は757万円(うち出雲市の補助金390万円)。運行協議会は今年、延べ7000人の利用を見込んでいる。
運行協議会のパンフレットの抜粋
 住民の高齢化が進んでいるうえ、神門通りから稲佐の浜に向かう観光客が増えていることなどから、出雲市や地元大社の自治会、商工団体などで大社の町を移動しやすい交通整備を模索。環境にやさしく、安全で乗り降りしやすい低速の電気自動車とすることにして車種を決めた。安全性や経済性、需要見通しなど様々な観点から検討を加えるため、2021年、23年、24年と実際に車を走らせる社会実験を3回にわたって実施した。  生活の足、観光客の足として一定の利用が見込めると判断し、今年2月に実証実験を行い、安全性や周遊効果、収支シュミレーションを改めて検証したうえで、5月9日から運行を始めた。初年度は12月1日までの119日間とし、利用状況などを踏まえ、次年度以降の運行期間を決定する。
 出雲市観光課によると、今年2月の実証実験は7日から11日までの5日間実施。悪天候のため減便し、利用は108人、1便あたり4.5人だった。利用者アンケート(33人)では、88%がサービスに満足と回答。停留所の位置、走行の安全に対する満足度は高く、車体のラッピングデザインも好評だった。交通広場、正門前から稲佐の浜に向かう利用者が多く、周遊性の向上に効果があると、観光課では判断している。運賃については  利用者の70%が満足と回答する一方、周辺店舗の割引券や他の移動手段との連携、観光ガイドを希望する人が多かったといい、出雲市グリーンスローモビリティ運行協議会で今後も検討を重ねていく。
 出雲市の原哲也・観光課長の話「5月9日に運行を開始し、観光客を中心に、大社地域の周遊手段として多くの利用があり、印象的で親しみのあるデザインも好評をいただいています。今後、夏季,秋季に向かって行く中で、冷暖房も完備しているので、快適に出雲大社周辺の情景を楽しみながら周遊する手段として、より一層の利用を期待します」

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