第25号 出雲大社大阪分院長 吉川 南津喜(御宮通)
出雲大社「平成の大遷宮」によせて

 振り返れば先の千家尊祀国造様から御遷宮のお話しを伺ってから何年になりますやら。
 千家尊祐国造様は全国各地で出雲の神様をお祀りされている氏神一社一社をご参拝になって御遷宮の無事をご祈念なさり、 千家隆比古権宮司様からは御本殿大屋根の檜皮葺の調査等宗祠の方々と共に着々準備を進めている旨をお伺いして私自身も身の引き締まる思いでその日を待ち望んでおりました。
 御本殿御修造に先立ち、平成20年4月20日、神秘的な時空間に包まれ仮殿遷座祭が齋行されました。
 御本殿の威容を間近に感じられる「御本殿特別拝観」が実施され、天井七つの雲の絵、年月を経てもなお鮮やかな美しさに目を見張りました。
 先の東日本大震災の地で生まれ育った松の御用材が千木として高々と掲げられたのも御神縁、明治御造営まで使用の塗彩方法、伝統の「ちゃん塗り」が、勝男木、鬼板などの銅板にほどこされています。
 以来諸事とどこおりなく執り進められ、いよいよ平成25年5月10日午後7時より、天皇陛下勅使、皇族方の御参列も賜り「本殿遷座祭」が齋行され大国主大神様が御仮殿から御本殿にお遷りになりました。
 神官百人供奉300人奉拝12,000人等全国から大神様の御神幸を奉拝せしとたくさんの方でにぎわいました。
 真っ白な絹垣に覆われた御神輿は威儀物を奉持方々のお供行列を従えられ、出雲楽の音色響渡る中、静かに御本殿に進まれました。私も気のひきしまる思いでお供いたしました。
 5年前の仮殿遷座祭は満月の下で執り行われましたが、当月は新月、朝から清めの雨が降っていました。 昼すぎに雨は上がり無事にお遷りになられたことを見とどけるかのごとく、すぐに後に突風が吹き雨降りとなり、このめぐりあわせに皆驚かされました。
 ゴールデンウィーク中には観光客75万人と例年の2倍の人出、近くの島根ワイナリーから大駐車場まで3時間もかかったことから、5月10日は交通規制もしかれ車や人の流れも順調で案ずることもなくゆとりをもって祭典の開始を待ちました。
 5月21日の奉祝祭に再度おまいりした折、平日にもかかわらず千二百人の参列者がありました。
 先々の遷宮を見すえて三次市の山林は「遷宮の森」と命名、植林が行われていますがたくさんの檜皮が採取できるのは約百二十年後、こうして多くの人の力と知恵によって未来へと受け継がれていきます。
 古事記のふるさとを多くの方に旅していただき蘇る力を感じてパワーアップ、日本国内外の安寧をせつに願わずにはおられません。

リターン